中国と歴史

 子供の頃、亡父に『矜持』の説話として聞かされた中国の故事はこんな話だった。

 とある皇帝が帝位についた後、過去の歴史において自分に不利な部分を修正するように命じたところ、歴史家はそれを是とせず、しまいには殺されてしまいます。
その後その息子にも同様の命令が下されますが、息子も同じくそれを拒否し、殺されてしまいます。
その更に弟に同様の命令が下りますが、やはり弟も拒否し、ようやく皇帝は歴史の改ざんを諦め、自分が捏造しようとした部分を赤い文字で書くように命じました。

 昔の事なのでちょっと違っちゃってるかもしれないけれど、矜持の説話として適当な話だったのじゃないかと思う。
 で、なんでこんな話をおもいだしたかというと、昨今の日中問題
 単に歴史の政治利用ってだけの視点だと、なぜ中国共産党があれだけ声高に歴史の改ざんはゆるせないだのなんだのでかい態度ででるのか、説明できないんじゃないかな。
 向こうでも上の話が矜持の説話として引用されているかどうかはともかく、まがりなりにも国をつかさどる組織のエリート達が、この話を知らないという事はないと思う。
 そして過去の帝政を絶対否定しての共産党、その立場は故事の中の歴史家の側になるわけで、中国共産党にとって歴史の改ざんや捏造をしているという事実を認める事は、かなり大きく矜持に関わる故に、あそこまで必死なのではなかろうか。
 歴史問題や靖国問題を、経済援助や譲歩をひきだすための便利な道具として使ってきた中国共産党だけど、日本人が思っている以上にそれは諸刃の刃なんじゃないかな。